台風接近中のニュースが続いていますね。
鹿児島旅行に行ったばかりなので、鹿児島や奄美の映像がニュースで出ると「ああっ!」とか「おおっ!」と思います。
そんな風に自分の日常に大事なものや好きなものが増えるのも旅の醍醐味ですね。
さて、今日はそんな旅の記録。
奄美での泥染めのお話です。
青山でギャラリーをやっている友人のいっちーさんに「奄美に行くなら泥染め体験を!」と薦められたのがきっかけ。
紹介してもらった泥染公園は残念ながらお休みだったのですが、探して行った「肥後染色」さんの泥染工房がこれまたとっても素敵なところで、すっかりその魅力にハマりました。
大島紬といえば泥染め!(奄美に行く前の私の知識はここまで。 「泥染め」という言葉は知っていたけど、それが具体的にどんなものかは知りませんでした。)
泥染めは大島紬の一工程として、古くから奄美に伝わる伝統技術です。
大島紬独特のあの美しい風合いの黒褐色は糸を泥で染めることで生まれています。
大島紬の泥染めは、まずはテーチ木という奄美に自生する木を細かくして、時間をかけて煮出した汁からつくる染料に漬込む作業からはじまります。山に行って木を伐採し(数年後にはまた塗料をとるために育つよう伐採します)、染料となる汁を煮出すまでもかなりの重労働です。
このテーチ木の染料に何度も漬込むことで、糸はここで白からオレンジ、そして茶褐色へと変化していきます。
茶褐色に変化した糸は泥田で染められます。奄美の泥はきめが細かく粒子が丸く(なので、糸が傷つかないそうです)、鉄分が豊富。テーチ木にはタンニンが含まれているので、このタンニンと鉄分が反応し、化合して黒褐色へと変化するわけです。
つまり、最初のテーチ木染めが重要になってくるわけですね。ここできちんと染めておかないと、いくら泥につけても黒にはならないということです。
なるほどねー。
このテーチ染めと泥染めを何度も何度も繰り返し大島紬の糸はようやくあのつややかな美しい黒褐色になります。
私たちの体験は半日でしたが、実際の大島紬の糸の場合は1週間~10日もかけるそうです。
わおー!
本当に本当に手間がかかっています。
しかもこの泥染めは大島紬を作る20近くもある工程のたったひとつ!
大島紬が「島の宝」といわれ、多くの職人さんの手を経て、いかに手間と時間をかけて作られているかがうかがえます。
奄美での泥染めの体験は糸ではなくTシャツやハンカチ、暖簾、ストールなど。木綿であれば大抵OK。
工房によっては持ち込みも可能(現地で無地のTシャツなども購入できます)。費用は3000円程度でした。
時間があればオススメですよー!
若い泥染め職人さんたちは、この伝統技術を大島紬の糸だけではなく、Tシャツやネクタイ、Gパンなどに用いて新たな作品として、展開しているようです。今回お世話になった工房でも、都内デパートの物産展などで展示会をすることがあるそうなので、足を運びたいと思いました。
こういう貴重ですばらしい伝統技術が現代の生活にうまくマッチして、また次の世代に受け継がれていくといいなと心から思います。
▼私たちはTシャツやタオル、ストールなどを持っていって染めました。まずはデザイン決め。この作業はわくわくしますね。どんなのになるかな~?
▼テーチ木染め。茶褐色になってきました。漬けてはしぼり、漬けてはしぼりを繰り返します。本土では馴染みのないテーチ木は本当にそこいらに普通に生えています。泥田に向かう途中でも「この木だよー」と教えてもらいました。
▼工房のすぐ近くにある泥田で泥染め。(すみません、染めてるところの写真はありません。あ、足が抜けない~~~~。う、動けない~~~~)本当にきめ細かい泥で、触っているとふわふわ、さらさらで気持ちいい!
▼テーチ木染めと泥染めとすすぎを繰り返すこと約4時間。だんだんと黒く染まっていきます。いやー。しんどかった!!!がんばった!!!
この4時間の間に、スコールのような雨が突然ふってきたり、おとーさんたちがトラックでどやどやとテーチの木を運んできたり、近所のおばちゃんや職人のにーさんの友人たちがふらりと来ては用件を伝えてかえっていったり。職人さんの奥さんが小さいこどもを目の前の道で遊ばせていたり。「ああ、こういうのっていいなあ」と、なんだかとっても懐かしい気持ちになりました。
ゆったりとした島時間の中で暮らすひとたちの日常を、工房の庭で真剣にテーチ木染めをしながら、なんとはなしに眺めていたあの感じを、私はずっと忘れないと思います。
▼出来上がりを見る瞬間(模様を出すために縛っていたところをほどく)は最高です!!!真っ白だったTシャツも、ほれこの通り~!ワンダホー!
使って、洗っていくうちに色が変化して(どうしても色落ちするので)いい感じになっていくのも泥染めの醍醐味だそうです。
工房の職人のお父さんやにーさんたちが皆気さくでやさしくて、本当に楽しかったです。唯一の心残りは、職人のにーさんがその日の夜、名瀬の街でライブをやるということで誘われたのですが、泊まっていたホテルが遠く予定が合わず結局行けなかったことです。機会があれば島歌バンド、聞いてみたい!
▼帰り際、工房のおとーさんが庭に生えていた小さなソテツをむんずと引っこ抜き、「持ってきなー」とビニールに入れてくれました。「ええっ!?これ、飛行機大丈夫ですかー?」とビビる私。「コレはお土産でも売ってるので大丈夫」とおとーさん。無事、家まで運ばれたソテツは鉢に植えられ、「ソテっちゃん」と呼ばれ、元気にしております。
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