『情報の「目利き」になる!ーメディア・リテラシーを高めるQ&A』 日垣隆
数年前、毎朝仕事で雑誌のモニタリングをしていたことがあります。
多いときは十数冊(月初の月曜日は月刊誌と週刊誌の発売が重なるので)を、まだ頭がボーッとしている朝の1~2時間でざっと目を通していました。
その夥しい数のモニタリング雑誌の中にエコノミストという経済誌があって、外部の論客から構成されている原稿が多くを占めるこの雑誌に、私はあまり興味を惹かれませんでしたが、巻頭の「敢闘言」というコーナーで、毎回やけに辛口で皮肉の利いた、でも妙に説得力のあるエッセイがあって、これは密かに愉しみのひとつでした。
で、このエッセイを書いている日垣隆さんの書いたものを読んでみたいなあ~、とずっと思っていて、今回ひょんなことから手にしたのがこの『情報の「目利き」になる』です。
期待通り、面白かった。
ふざけているのかと思うほど(実際ふざけている)皮肉たっぷりのこなれた文章。
独自の視点。
目から鱗がポロポロ落ちるような気付きが沢山ある本です。
ITリテラシー、メディアリテラシーなどリテラシーという言葉が巷で聞かれるようになって久しいですが、こういったカタカナ語は広まれば広まるほどその意味が多義に渡り曖昧になる傾向があります。
メディアリテラシーとはもともと教育や学者の世界で「識字」という意味で使われていたそうです。
つまり「読み書き能力」。
本書では、メディアリテラシーの意味を「情報の目利きになる」と捉えています。
プロにとっては鑑定能力または愉しませる技であり、消費者にとっては騙されず、愉しむための知恵、だと。
よくあるノウハウ本ではなく、情報の目利きになることの重要性を自らの体験に基き、軽妙な文体で説いています。軽妙といっても、やや強引な毒のある語り口なので、好き嫌いがあると思いますが、日垣さんが本書で述べている「仮設を立てる」ということの重要性は、目利きになる上では必要不可欠なものだと思います。
仮説を立てるといっても難しいテーマじゃなくていいんです。
仕事をしていて、街を歩いていて、食事をしていて、ドラマをみていて、自分がふと興味をもったり疑問をもったことに対して「もしかしてこういうことなんじゃないか?背景にはこんな事実があったりして?なーんてね。」と仮説をたてて、それをとことん検証する。
検証するひとつの効果的なやり方(そして誰にでもできるやり方)は沢山本を読む、ということ。
この場合、仮説を意識しつつ、ひとつのテーマに関連した本を一気に集中的に読む。
時間をかけてだらだら読んでいると最初に読んだ本の内容を忘れてしまうから。
(これは本当に耳が痛い!)
そうするうちに最初は相手の土俵で読んでいた本を、いつか自分の土俵で読めるようになる、と。
また、考えながら書くという行為も、このメディア・リテラシーの基本ということです。
なるほど。
それだけでも、私がこのへなちょこblogを続けていく意味づけになります。
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