友人に勧められて田口ランディの『コンセント』を読む。
このヒトの本を読むのは初めて。
実は、ついこの間まで田口ランディというひとは男のヒトかと思っていたくらいなので(笑)
面白かった。
主人公は兄の変死を機に、現実と狂気の境をさまよいながらやがて自分の本来の姿を知る。
なーんて書くと、なんだか明治時代のお堅い文学作品みたいだけど、
本来の姿っていうのは実は「セックスすることで他人を癒す現代のシャーマン(霊媒師)」という今時(?)なオチ。
とにかく、日常の生活の中で誰にでも起こり得る非日常の出来事を通して、思いきり精神世界にフォーカスしている。(このフォーカスの仕方は半端じゃない、と思う)
兄の死に様や、カウンセリングでのやりとりや、これでもかってくらい出てくる過激な性描写や、シャーマンとして目覚めるときのトランス状態(ここの描写は一読の価値あり)のリアルさに比べると、人物像がほとんど描かれていない。その物足りなさというか、アンバランスさが根底に漂い、妙な危うさを感じさせる本だった。
読んでてぐったりしてきたが、過激な内容の割に、読んだ後、思いのほか余韻を残さないという意味でも不思議な小説。
それにしても、名前だけは聞いたことがあった「田口ランディ」というヒトはこんな小説を書くのか、ということに驚いた。
読んだ後にちょっと調べてみたら、実際にお兄さんが自殺をしているとかインターネットの初期の頃からメルマガなどを出している有名なひとだとか、著作権の問題でかなり批判されたことのあるひとだとかってことを知って更に「う〜ん」と思った。(ついでに、この間友人が貸してくれた「よしもとばなな」のエッセイに出てきてた「同業者のランちゃん」というのは田口ランディのことか!と、突然ひらめいた。・・・っていうか、鈍い?私?)
私は小説でも映画でも、なるべくなんの情報もない状態で手に取るのが好きなので、この「意外な感じ」はとても満足。
いろいろな情報が氾濫している世の中で、欲しい情報をいつでもどこでも手に入れることが簡単になったけれど、自分の知りたくない情報をシャットアウトするのってほんとに難かしいことだなあと思う。
といいながら、私自身がblogでこんな風に紹介しているので矛盾していますが。
今回は珍しく小説のオチまで書いてるし。ごめん!(笑)
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