山本英明さんの『塗師屋のたわごと』を読む。
塗師屋(ぬしや)とは山本さん曰く
「作りたい製品をイメージして、木地屋さんと相談しつつ、最終的に実際の物体に作り上げていき、そこに漆をきれいに塗り上げて、世の中に送り出す仕事。漆器製作の総合プロデューサー。」
山本さんは福井県鯖江の、そんな塗師屋の三代目。
いやー。
単純に、漆器の事を知りたいなあ、と思って手にした一冊だったけど、全く予想外の内容でとても面白かった!
(読書の醍醐味はホント、こういうところにありますね!)
なんというか、生き難い人生を敢えて歩んでいるひとだなあと思った。
私はこの手のヒトにとっても弱いのだ。
鯖江の異端児。
業界の問題児。
(おそらく!)
山本さんの云っていることは間違っていない。
正しい。
私は何度も同意したり、納得しながら読んだ。
でも。
こんな風に生きていくのは本当に本当に信念のあるひとでないと難しいと思う。
とても辛いことだ。
だけども、山本さんはこんな風に生きられないことの方が辛いんだろうし、こんな風にしか生きられないひとなんだろうな。
そして、本当はそれこそが人として生きる意味なのかもしれないとも思った。
それは、もしかしたら、とても幸せなことなのかもしれない。
時にとても過激に、とても偏っていると思われる発言も多々あるけれど(特に後半!)、山本さんが云うのはいいんだと私は思う。
それだけの覚悟を持って、自分の仕事と人生に向き合っているひとだから。
そこから発信される言葉はホンモノだ。
物事には、大抵、正解なんてなくて。
結局、どれだけその事に対して真摯に向き合っているかだと思う。
そんな山本英明さんの作る漆器を一度見てみたいと思いました。
そして。
器に興味のないひとが読んでも、いろいろと考えさせられる一冊だと思います。
-これから大切になってくるのは、品物の後ろに人がいることを実感できることや。品物の背後にある人の気配に人々は飢えている。人が世の中の中心だということを忘れかけている時代には、「人がいますよ」と伝えることは、一番いいことではないかと思う。
-器というものは、気軽にどんどん使っていくべきや。それは粗雑に使うということとは違うと気付かされるのは、大切にしていたコップを割ったりして、心に痛みを覚えるような経験を積み重ねてはじめてたどり着けるものや。こうしたことが、マナーの出発点なのや、と思う。
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