京都熱が冷めぬうちに、と読んだ本です。(我ながら単純なチョイスだ!)
『祇園の教訓』。
これは10歳から京都の祇園甲部の花柳界で育ち、舞妓・芸妓として活躍した岩崎峰子さんという方の書いた本。(現在は引退して2児の母)
花柳界という場所が、外国人を含む多くの人々にいかに間違った認識を持たれているかということを嘆き、日本の伝統芸を継承する舞妓・芸妓の世界を正しく理解してもらおうと書かれたもの。
舞妓さん・芸妓さんっていうのは、「一見さんお断り」の世界で選び抜かれた政界・財界の人たちにとって、よき理解者であり同時に冷静な観察者という印象を受けました。
自我をおし殺し、相手を愉しませながら、気品とかわいらしさを保ちつつ、常に理解者・観察者に徹するっていうのは凄い職業だと思います。貴重です。
必然的に、理解するに値する、観察するに値するひとたちしか通えないシステムになっているのは納得です。
ちょっと話は逸れますが、これって実は、職場における女性の立場にも似たような部分があるんじゃないかと思いました。理解に値しない、観察に値しない男性陣ばかりの職場では、女性もそりゃあかわいげがなくなるってもんじゃないかと思ったり。(まあ、男性陣も逆の言い分はあるでしょうが。笑)
勿論、今の社会では男性と同じ立場で仕事をしているひとも沢山いますし、私もそういう局面に立たされることはあります。それはそれでとてもいいことです。
ただ、そういう意味で云うと、やっぱり舞妓さん・芸妓さんっていうのは徹底して理解者・観察者という立場を守るプロなんですね。
大学時代、仲の良かった関西出身の友人が「こどもの頃は舞妓さんになるのが夢やったんやあ」と云っていたことを思い出しました。とても聡明でかわいらしい魅力的な女の子で、男の子にも人気がありました。
本書について話を戻すと、もう少しつっこんだ内容(裏話ということではなく)を期待してしまいます。
さらりとしすぎていて、多くのひとが持っているという花柳界の間違った認識と実際のプロフェッショナルな世界がいまひとつ立体的に見えてこないのが残念でした。
アメリカで出版した『Geisya, a life』という本はイギリス・スペイン・フランスなどでもベストセラーになっているとのことですが。
最後にもうひとつ。
テキサスに住む日本人から講演会の依頼を受け、国際交流基金を受け講演会を開催しようとしたところ「ご主人(注:画家の岩崎甚一郎氏)は大学院を出ているので協力はできますが、奥さんは中学卒業なので協力はできません」と云われたというエピソードを紹介し、伝統工芸・芸能を継承している人たちに対して「マイスター制度」を作るべき、と岩崎さんは云っています。
これは多いに同感です。
日本には、日本人にも知られていない様々な伝統的な技や芸がまだまだ沢山あると感じています。
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